2008-06

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バーチカル ウェイ

フリークライミングのようなスポーツをやっていると、自助努力とか自己責任ということをよく考える。例えば、かなり高い地点まで登って力が尽きてしまいそうなとき。ホールドを握る手は震え、わずかな突起を支えに立ちつくす足先は頼りない。ロープとビレイヤーが自分を支えてくれていると分かっていても、墜落という事態は、人間にとってどこか根源的な恐怖を呼び覚ますものらしい。進むか、敗退するか。それを決めるのにも勇気が要ったりする。もう少し進めば楽になるかも知れないと思いつつ先に進めない時がある。ロープを握るビレイヤーに大声で「テンション!」と言えば支えてくれるのだが、ランナウトしてロープをクリップする瞬間は予期せぬ大きな墜落が待ちかまえているかも知れない。そう思った瞬間、(私の友人が言うところの)「恐怖と緊張で頭が真っ白になる」ことだってある。たかだか15メートルほどの人工壁でさえ、リードクライミング(登りつつ順次支点にロープをかけていく方法)はそういう恐怖を味わうのだから、これがゲレンデで30メートルの壁だったら恐怖が増すのは容易に想像がつくだろう。ならばなぜ登るのかと問われたら、面白いからとしか答えようがない。そして、その面白みの中には、恐怖という成分が多分に混じっている。登攀時に味わう苦痛と疲労と恐怖。それが、ルートを克服したとき、悦びと昂揚に変わる。面白いと思ってしまう。この感情を味わってしまうから、やめられなくなるようだ。

爾(なんじ)、脚あり、爾、歩むべし、爾、手あり、爾、捉(と)るべしである。幸田露伴 努力論

自分の手と、脚に、全てがかかってくるのだ。恐怖を背負い、その恐怖を面白いと思いつつ登る。
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フォーリングエンジェル

先日の登攀で、久しぶりに派手な落ち方をした。

良く行く人工壁で、ルートには慣れている。難易度もさほどではない。ルート上ほぼ1メートルごとにプロテクションを付けるハンガーが設置されているから、そのぶんを登るごとにヌンチャクを設置してロープを通す、その作業の繰り返しで完登できる。

9メートルほど登ったところで、トラブルが起きた。8メートル地点のプロテクションを取り、1メートルほどランナウト(前のプロテクションから保護なしで上に行った距離)して目の前のハンガーにクリップしようとしたとき、足が滑った。ハイシーズンのためクライマーが多く、余分なチョーク(手に付ける滑り止めの粉)がホールドに残っていた。こういう場合は驚くほどソールのフリクション(抵抗)が減る。

あっと思うまもなく落下。1メートルランナウトしているから、支持地点からさらに1メートルは落ちる。しかも、ビレイヤーはロープクリップに備えてロープを余分に繰り出していたから、その分も落下。さらに、ビレイヤーはベテランなのだが、慣れた場所でもあり、最初のプロテクションからかなり離れてロープを操作していた。そのほうが繰り出したりするのに楽だからだが、まさかの墜落に慌てたらしく、2メートルほど「横に」引きずられてロープをロック。

総墜落距離5メートル以上、プロテクションからだけで都合4メートル強の落下であった。参考までに、1メートルランナウトして落ちると通常は総落下距離は2メートルプラスアルファ。いかに無駄に落ちたか、おわかりいただけるだろうか。

落ちたのが8メートル地点だからまだ良かったが、あと3メートル低い地点から落ちていたら、ロープの伸縮率も考えると、見事にグラウンドフォール、つまり地面に落下だ。

見ていたギャラリーは肝を冷やしたという。すぐ止まるかと思った距離を超えて落ち続ける私を見て、言葉が出なかったらしい。

私は、腕に若干のロープバーン(摩擦によるやけど)を負っただけ。壁に正対して落ちたから、体勢を崩すことなく宙ぶらりんになった。別に恐怖心もなく、「また登り返すのかよ、面倒だなぁ」くらいの気持ちだった。

落ちるときと言うのは、そんなものかも知れない。

私が落ちたあと、さらに続けてクライムする仲間たち。所属するチーム内で、安全確認とリードビレイのやり方に対する態度が、それまで以上に慎重かつ真剣になったのは言うまでもない。

墜ちた瞬間、フォーリングエンジェルは微笑んだに違いない。堕ち行く天使は愚かさを笑うのだ。そして、彼女がいつも救いをもたらすとは限らない。

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