2017-05

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生きる荒野

火を熾す (柴田元幸翻訳叢書) (SWITCH LIBRARY 柴田元幸翻訳叢書)火を熾す (柴田元幸翻訳叢書) (SWITCH LIBRARY 柴田元幸翻訳叢書)
(2008/09/10)
ジャック・ロンドン/柴田元幸 訳

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出張の帰り、時間があったので新宿紀伊国屋に立ち寄った。新刊コーナーで平積みになっていたのを手に取り、ぴんと来たので購入する。

弱冠40歳で亡くなったジャック・ロンドンの短編集。代表作とされる『野生の呼び声』は昔読んだ記憶があるのだが、内容は忘れている。この人の経歴や代表作については、だから、語ることができない。しかし、それは幸いにも、新鮮な感動をもたらしてくれた。

帰りの列車の中で最初の2編を読了。夢中だった。表題作『火を熾す』と、次の『メキシコ人』まで読んで、後が続かなかった。終着まで時間があったのだが、次の『水の子』を少し読んだところで、これは時間がゆっくりと流れる中で読みたい、と思ったのだ。時間つぶしに読める本ではない。いや、最初の2作は夢中になって読んだのだからそういうことでもなさそうだ。1作読むごとに、その読後感を味わいたくなったのだろう。時間をかけて、何度も思い返す。

訳者後書きにも書かれていたが、作風は剛球ストレート。楽しんで作者とキャッチボールするような話ではない。ジャック・ロンドンが放つ小説の「力」を受け止めなくてはならない。それには準備がいる。

凍てついた極寒のユーコン川。その白い荒野を歩く主人公を描いた『火を熾す』は、おそらくこれから何度もフラッシュバックのように、私の頭をよぎるだろう。降り積もる雪の中、苦労してガソリンストーブに点火しているとき。しんしんとテントに当たる雪の音を聞きながらシュラフにくるまるとき。遠く、タイヤチェーンがリズミカルに音を立てる、凍てついた夜。あらゆる「寒さ」のなかで、情景が甦るだろう。

『メキシコ人』の暗い目をした青年。折に触れ、その憎悪を想い出すだろう。爆弾テロの犠牲者、圧政の中にある人たち。疲れた表情で銃を下げ歩く兵士。それらの光景を、あの暗い目と、醒めきった意識のはてに見えてくる狂気のような正気と生気を。

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