2017-05

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「鏡の法則」のロジック?改変されたシンクロニシティ

 はじめに

 「鏡の法則」という文書がネットで紹介された。良い話として注目され肯定的な反応をする人が多い中、一部からその文書に対する疑義が上がった。このエントリでは、「鏡の法則」を読んだ管理人(straymind)が該当文書の核心的部分にシンクロニシティと呼ばれるユング深層心理学に属する考え方の誤用もしくは意図的曲解に基づく文章構造があると考えたため、その根拠を引用文とともに説明することを試みた。長文。

 独り言:これはあくまで仮説。というかネタに近い思考実験(笑)。
 ネタもとのあまりのバカバカしさに、このくらい真面目に構えて突っ込まないと毒が中和されそうで。

 本文

 ちまたで注目されている「鏡の法則」。これを読んで感動した人、胡散臭いと思った人、それぞれの反応を見ると興味深いものがあります。

「鏡の法則」は玄倉川さんのブログエントリ「ハンカチを窓から投げ捨てろ!」で知り、早速読んでみました。
 ネタ元はこちら>鏡の法則(ハンカチを用意して読め!)
 さらに大元はこちら>人生のどんな問題も解決する知恵 『鏡の法則』

 感動した、いや、感動しなかったという意見対立があります。胡散臭いかとかここが変だとか、ここが変だといっている人のここが変だとか賑やかなんですが、私としてはこの「鏡の法則」はある種の心理学理論が意図的に改変された考え方に基づいた文章であると判断しました。

 キーワードは「シンクロニシティ」です。以下、この言葉をキーワードに「鏡の法則」を読み解いて見ます。非常に簡単です。

 文の大意は、育児に悩む母親Aと、いじめに悩む息子。その母親の夫という家庭があり、そこにカウンセラーじみた経営コンサルタントのB氏が絡んで、アドバイスをするうちに息子のいじめが消えてなくなる、というものです。

 B氏は不思議なことに子供のいじめにまったく関与しません。それよりも、母親Aとその父親、さらに夫との過去の軋轢を解きほぐします。これにより母親は感情をゆすぶられ、自分と父、夫の関係を修復したという実感を得ます。

 この実感を得たその直後、息子が帰ってきていじめっ子と和解したことを報告します。

 ただこれだけ。

 たしかに母親と父の和解プロセスは泣かせるものがあります。多くの人が自分の身の上と引き比べて感動するでしょう。

 多くの人の意見が、この点で「泣けた」「泣けない」という対立意見を述べる形になり、さらにその手法が心理学的に正しいとか詐欺的手法だという点でも意見が分かれます。

 ジャンポルスキー博士という人の本が紹介されますが、この人の考え方には「鏡の法則」らしき考え方、つまり「他人に対する感情は自分に戻ってくる、だからよい感情を持つべきだ」というものがあります。これにより、母親がよい感情を持ったからいじめがなくなったという風に捉えることができますが、当然それは文中に説明がなく、飛躍であり憶測です。

 つまり、肝心の息子のいじめがなぜ終わったかという点ではまったく何の説明もなく、お話はさらりと終わります。この点で突っ込む人もいますが、あまりうまく説明されることはありません。

この部分にシンクロニシティという考え方(の模造品?)を組み込むとうまく説明がつきます。

 シンクロニシティとは何かというと、心理学者ユングが唱えた考えです。Wikipediaによると:

何か二つの事象が、「意味・イメージ」において「類似性・近接性」を備える時、このような二つの事象が、時空間の秩序で規定されているこの世界の中で、従来の因果性では、何の関係も持たない場合でも、随伴して現象・生起する場合、これを、シンクロニシティの作用と見做す。



 これは難しい考え方で、正直私にもはっきりと理解できません。科学的な考えでないとして批判を受けたり、疑似科学(偽科学)とされたり、呪術的だという批判もあります。つまりユングはそういう考えを持ちましたが、一般に広く受け入れられている考え方ではないのです。

 しかし、シンクロニシティを想定すると、私たちが出会う偶然の中には、単なる偶然(確率で決まるような偶然)以外に、「何らかの意味のあるように感じられる偶然がある」ととることができます。

 こんなことがなぜ起こるかというと、ユングは「集合的無意識」というものが私たちの無意識の基底にあって、それが「個体化」したものが私たちの意識であり、私たちの意識と無意識は集合的無意識によって連絡していると考えました。そして私たちひとりひとりの意識が現実世界に作用して「偶然」が「通常の因果関係では考えられないような関連」のかたちとしてたち現れるとしたのです。

(ユングのシンクロニシティ具体例は文末の追記3を参照してください)

 事実、「鏡の法則」の作者は違うところでこの考え方を採っています。おおもとの文の作者である方のホームページから引用してみますと:

シンクロニシティーとは、共時性とも訳されますが、わかりやすく言うと
「意味のある『偶然の一致』」のことです。


次のようなシンクロニシティーは、おそらく誰もが経験したことがあるの
ではないでしょうか。

・長らく会っていなかった友人のことを思い出していたら、その日にその
 友人から電話がかかってきた。

・家族に何かよくないことが起きた時、自分は別の場所にいたのに、同じ
 時間に、その家族のことが気になって胸騒ぎがした。(=虫の知らせ)

・友人と「ある人」のうわさをしていたら、間もなく、その「ある人」が
 通りかかった。(=うわさをすれば影がさす)


これらは、人間の意識が奥底でつながっているから起こるのです。
これらの「偶然の一致」は、実は、偶然起きていたわけではなかったので
す。


シンクロニシティーと成功法則の関係とは?

 (じつはこれ、シンクロニシティそのものではありません。「布置(ふち)」という考え方です。詳しくは追記を参照してください)

 実際の文を見てみましょう:

思えば、今日は家事らしきことをほとんどしていない。
朝の9時ごろB氏に電話してから、1日中自分と向き合っていた。

「晩ご飯の用意、どうしよう?」
そう思った時に、息子が帰ってきた。

息子「ねえ、お母さん聞いてよ!」

A子「どうしたの?何かあったの?」

息子「C君知ってるでしょ。実は昨日、C君に公園でボールぶつけられた
んだ。」

A子「あっ、あー、そうなの。C君って、あなたを一番いじめる子だよね。」

息子「さっき公園から帰ろうとしたらC君が公園に来てさー。で、『いつも
いじめててごめんな』って言ってくれたんだ。」

A子は「そうだったの!」と言いながら、まるで奇跡でも体験しているよ
うな気持ちになった。
こんなことが偶然起きたとは思えなかった。
そして、心から感謝の気持ちが湧いてきたのだった。


鏡の法則(ハンカチを用意して読め!)

 多くのブログでここの部分に突込みが入ってますよね。なんでやねんって。

 今までの説明を読めばなんとなくお分かりだと思いますが、「鏡の法則」でなぜ息子のいじめがなくなったか、その記述が「偶然」であるかのようにさらりと書かれている背景に「シンクロニシティ」(作者言うところの、意味のある偶然)が想定されていると考えれば、すんなり話が通るのです。

 しかし、それだけではまだ完全ではありません。なぜ母親Aが父を許し、夫を許したら「シンクロニシティー」が起こったのか?

 ここがミソです。

「母親は悪い感情を持っていた。それをコンサルティングによりよい感情に変えたら、「シンクロニシティ」によりいじめがなくなるという良い偶然が生まれた」

 こういうメッセージが隠されていると推測することが可能なのではないでしょうか。

 わたしはこの考え方がユングのシンクロニシティを改変した「シンクロニシティ」だと思えるのです。

 最後の部分を引用します。鏡の法則の作者が考えたと推測できる「シンクロニシティ」を意識しながら読んでみて下さい:

A子は、その日起きたことをすべて話した。
朝、B氏に電話をかけたこと。
午前中は、父への恨みつらみを紙に書きなぐったこと。
午後、父に電話して和解したこと。

「そうか、お父さん、泣いてはったか。」
夫も、目に涙を浮かべながら聞いてくれた。

そして、息子がいじめっ子から謝られたこと。

「ふーん、不思議なこともあるもんやな。Bさんのやり方は、俺にはよく
分からんけど、おまえも楽になったみたいでよかったな。」

続けてA子は、泣きながら夫に謝った。
そして夫も、泣きながら聞いたのだった。


鏡の法則(ハンカチを用意して読め!)

 ユングはシンクロニシティを考えました。もともとのシンクロニシティには「意味があるとしか思えない偶然」はあるかもしれないとしていますが、そこに「善悪」は考えられていません。ましてや、「自分に都合のいい偶然が都合のいいときに起こる」なんてことはありません。

 このことを警告した文章を引用します:


シンクロニシティは一見突飛な理論に見えるが,深く考えると,超心理学の諸理論と関係づけられ,理論を整理するうえで有効なものである。しかし,理論としての実効性は,あらかじめ「意味」をどう捉えておくかに,大きく依存している。「意味」が(元型などとして)事前定義されていないと,逆にシンクロニシティによって意味の定義を見出すようになってしまう。そうなるとシンクロニシティは,世界を予測する理論ではなく,意味とは何かを定義する手段となる。偶然の一致から迷信を生み出す手段にもなるので,注意が必要である


超心理学講座 シンクロニシティ

 つまり、鏡の法則はユングのシンクロニシティ概念そのものではなく、「善悪を基本とした因果律に関連して人生を支配する意味のある偶然」という意図的に改変した意味で「シンクロニシティ」という考え方を用い、それをもとに「良い感情を持てば良い偶然が生まれる」としたものなのではないでしょうか。

 「善悪を基本とした因果律に関連する意味のある偶然が人生を支配する」って、言い回しはやけに難しいですし矛盾しているように思えますが、理詰めで考えれば「鏡の法則」はそうとしかいえないものです。

 こうすると、「人生のどんな問題も解決する知恵 『鏡の法則』」という言葉も、その背景がわからない人にとっては説得力を持ちます。

 コンサルティングにより「悪い感情」を「良い感情」に修正すれば「良い偶然」が転がり込んでくるのですから、確かに「人生のどんな問題も解決」することでしょう。

 でもそれ、都合よすぎません? というか、神社で神様にお願いしてお賽銭を入れたら良いことが起こると保障するよと神主さんがいうようなものじゃありませんかね。

 しかも、これを逆に考えれば「悪い感情を持っていると悪いことが起こる」と取れます。

 これは実際に冒頭でB氏がA子に言っていることです。ちょっと長いですが引用してみましょう:


A子「子どもがいじめられるということと、私の個人的なことが、なぜ関
係があるんですか?何か宗教じみた話に聞こえます。」

B氏「そう思われるのも、無理もないです。われわれは学校教育で、目に
見えるものを対象にした物質科学ばかりを教えられて育ちましたからね。
今、私が話していることは、心理学ではずいぶん前に発見された法則なん
です。昔から宗教で言われてきたことと同じようなものだと思ってもらっ
たらわかりやすいと思います。私自身は宗教には入っていませんけどね。」

A子「その心理学の話を教えてください。」

B氏「現実に起きる出来事は、一つの『結果』です。『結果』には必ず『原
因』があるのです。つまり、あなたの人生の現実は、あなたの心を映し出
した鏡だと思ってもらうといいと思います。例えば、鏡を見ることで、『あ
っ、髪型がくずれている!』とか『あれ?今日は私、顔色が悪いな』って
気づくことがありますよね。鏡がないと、自分の姿に気づくことができな
いですよね。人生というものが鏡だと考えてみて下さい。人生という鏡の
おかげで、私たちは自分の姿に気づき、自分を変えるきっかけを得ること
ができるのです。人生は、どこまでも自分を成長させていけるようにでき
ているのです。」

A子「私の悩みは、私の何が映し出されているのですか?」

B氏「あなたに起きている結果は、『自分の大切なお子さんが、人から責め
られて困っている』ということです。考えられる原因は、あなたが『大切
にすべき人を、責めてしまっている』ということです。感謝すべき人、そ
れも身近な人を、あなた自身が責めているのではないですか?一番身近な
人といえば、ご主人に対してはどうですか?」
(以下略)


鏡の法則(ハンカチを用意して読め!)

 特に、ここに注目してください:

つまり、あなたの人生の現実は、あなたの心を映し出
した鏡だと思ってもらうといいと思います。

同箇所より再び引用



 一般的に見れば「心がけ次第で人生は変わる」、という人生訓に見えますが、著者のメッセージとして前後の文脈から考えれば実質は違うものだといえます。

 それは一見宗教的に「因果応報」に近い考え方ですが、それよりも「想ったことが現実に対して作用する」という点では呪術的なイメージです。そして、心理学的には「シンクロニシティ」(しかも改変された考え方)になります。

 だから、自分の思いが自分の人生に跳ね返ってくる「鏡の法則」なんですね。

 シンクロニシティという、いまだ本当かうそかわからない考え方を「真実である」と断定し、それを都合のいいように変えて「人生の問題を解決します」というのが作者の意図ではないでしょうか。

 しかも、「鏡の法則」にはシンクロニシティという言葉は出てきません。しかししつこく、印象的にそれらしき出来事がちりばめられています。巧妙に隠されているのではないかと思える文章です。

 さてここからが本題。

 意味のありそうな偶然って、たしかに良く起こりますよね。コンサルティングにより、自分の感情のなかにある「悪い部分」が変わり、「良い部分」を実感できたとしましょう。コーチはこう言うかも知れません。

「では、三日間普通に生活してみてください。きっと何か良い変化が起こりますから」

 そして三日後。

 「何かいいことがありましたか?」

 三日もあれば、何かひとつぐらい嬉しい偶然がありますよね。それをコーチに告げると。

 「そうですね、それがシンクロニシティによる効果です。あなたの感情が良い方向に向かったのですから、そういう偶然が現れ始めたのです。もう少しがんばってみましょう。そうすれば、もっと良い偶然が訪れるようになります」

 ああ。こうしてセミナーは繁盛していく、のかもしれません。

******

さいごまで読んでいただいてありがとうございます。

最初にざっと思いつくまま書いた後、ちょくちょく加筆修正しています。2006/07/13現在バージョン2.5くらい。そうしたら長い長い文章になってしまったぁ。(^^;

追記

 二番目の引用で作者の人が言っている「シンクロニシティー」は、実は「布置(ふち)、コンステレーション」というもので、「一見別々に起こった出来事でも、あるひとにとっては大事な意味を持つめぐり合わせ」という考え方です。たとえば適切な時期に伴侶にめぐり合う(運命的な出会い)、ふらりと入った本屋で興味を持っていた分野の大切な本をたまたま手に取る、いやなことがあるとさらにいやなことが起こる(泣きっ面に蜂)など。これは「偶然なのだが本人にとっては意味がある」という程度のものです。
 ユングはこれをもとにして「非因果的連関の原理」、すなわちシンクロニシティーという概念を発展させました。

追記2

 ユング心理学は深層心理学といわれる学問のひとつです。その心理学をもとにして、ユングは統合失調症(当時は精神分裂病といわれました)の研究に大きく貢献しました。そのほかにもうそ発見器開発の原点を作り、アルコール依存症・薬物依存症解決にも大きく貢献したり、UFO研究に貢献したりと、さまざまな分野で影響を与えました。
 ユングの心理学から発達した心理療法はおもに「対話」をもちいて来談者(患者)と向き合う方法をとります。ユング後に発展した主な考え方は三つあり、「内なる象徴と対話する:古典派」、「イメージと対話する:元型派」、「人間の精神的成熟と対人関係を重視する:発達派」にわかれます。
 日本にユング派心理学をもたらし普及させた人は河合隼雄で、箱庭療法という治療法を用いました。また河合はユング心理学を日本人向けに修正した業績でも知られます。
 また、ユング派の心理療法は、精神分析など他のやり方を用いる心理療法家とも交流を持ち、発展を続けています。
 さらにユング心理学はトランスパーソナル心理学の誕生に多くの影響を与えました。

追記3

 ユングのシンクロニシティの例をひとつ挙げておきます。どなたでも参照できるようにネット上のソースを取り上げました。


ユングのシンクロニシティの最も有名な例は、プラム・プディングに関わるものである。ユングの語るところによれば、Deschamps という人物が、隣家の de Fortgibu からプラム・プディングをご馳走してもらったことがあった。その十年後、Deschamps はパリのレストランでメニューからプラム・プディングを注文したが、給仕は他の客に最後のプディングが出されてしまった後だと答えた。その客とは de Fortgibu であった。更に数年後、 Deschamps はある集会で、再びプラム・プディングを注文した。Deschamps は昔の出来事を思い出し、これで de Fortgibu さえいなければ大丈夫だと友人に話していた。まさにその瞬間、年老いた de Fortgibu が、間違ってその部屋に入ってきたのである。


wikipedia シンクロニシティ より

追記4

 ユングのシンクロニシティを解説したHPへのリンクです。わかりにくい専門的な文章ですが、興味のある方にはお勧めです。
超心理学講座 シンクロニシティ

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