2017-07

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

医療費未払い増加に思う

 公立病院での医療費未払いが増えていると聞いて久しいのですが、気になる点をいくつか。(記事のさいごに引用あり)

 まず、未払いの原因を列挙すると:

1 低所得者の増加
2 医療費自己負担の増加
3 患者のモラル低下

 となっています。これは個別の原因ではなく相互に関連しあっているものでしょう。低所得者になるにつれ自己負担に対する負荷感が増して、それがモラルを突き崩していく図式が見える気がします。

 病気はいつやってくるかわからないもの。そのことのために手持ち現金をプールしておく余裕はないわけです。「モラル」といってもなんだかぴんと来ませんが、「手持ちで自由になるお金はあるが、ほかの事に振り分けたいし、そのように計画してしまっている」ことから「可処分所得を医療費に振り分ける余裕がない」となり、結果として「できれば払いたくない」になるのでしょう。

 このような気分が広がると「低所得者層」と言われる人たちのあいだで「踏み倒しも辞さず」となることでしょう。これは一概に「モラル低下」といえるかどうか?

 もちろん例外もあるでしょうが、もし「無い袖は触れない」立場の人たちの増加とそれにより自衛的に治療費を払いたがらない心理の増大をもって「モラルが低下した」と言うことならば、「貧乏人は盗人根性がある」と決め付けているようなものじゃないかと思えます。

 一方、医療費自己負担の増加が「病院にいきたくない気分」にどのくらい影響しているのかをみるのには、別の視点が必要となります。

 長瀬指数というものがあり、これは医療費負担率とそれに伴いどれくらい受診が抑制されるか(逓減率)を示す数式ですが、それをもとに見てみると医療費負担無料の場合を1として、下記のように受診抑制が起こります。

1割負担 0.848
2割負担 0.712
3割負担 0.592
4割負担 0.488
5割負担 0.400
6割負担 0.328
7割負担 0.272
8割負担 0.232
9割負担 0.208
10割負担 0.200

2割負担のときは70%の人が受診するのに3割本人負担だと医療需要のうちの約60%受診と減少し、4割負担で50%を切ることになり、全額負担(無保険ですべて自己負担)となると20%の人しか病院にいかない、と言うことになります。
神奈川県保険医協会より


 今現在の健康なサラリーマン層ですでに「病院に行きたい人」のうち40%は「行かない」判断をしていることになります。

 しかし、この40%の人たちにも病気やけがは平等に降りかかってくるわけで、これが手持ち金の医療費への振り分け抵抗から未払いにつながる「モラル低下」の一因になっていることは比較的容易に推測できます。

 で、だれが自己負担比率を上げたかというと、公立病院のボスである厚労省と国ということです。つまりは(さまざま自己負担増をせざるを得ない理由は国側にもあるにせよ)国の決めた制度により公立病院での未払いが増える、という現象となるのでしょう。そのために病院の収支が悪化して十分な医療行為を実施できなくなると言う馬鹿なことになってきていると思えます。

 また、「低所得者層の増加」という点で見ると、はっきりいって日本国民のいったいどれくらいの人が「自分は低所得者ではない」と言い切れるかということもあります。実際に生活保護を受けなくてはならないほどの低所得者でも、生活保護制度そのものの厳しさにより生活保護を受けるに至りません。また一般的な世帯でも各種ローンや教育費、老後資金確保など「将来的な備蓄と長期生活設計」のもとに家計をやりくりしているのが実情で、さらに刹那的な遊興費も使わざるを得ないところです。

 そういうなかで、突発的に生じる「医療費」は、予定外の経済的負担でしかありません。

 もともと、そういう「予定外の経済的負担」軽減のために機能していた面もある「国民皆保険」制度なのに、自己負担率引き上げにより予定外の出費が以前より重くのしかかってくるなら、それを回避するために「医療費踏み倒し」とか「出来るだけ後回しにしたくて支払いを引き伸ばす」という心理が動いたとしても不思議はありません。

 「モラル低下」というのが医療費未払いの原因のひとつとするのは、(繰り返しますが本当のモラル低下もある得るとは思えても)そういった点で疑問の残る考え方だと思えます。

 さらにいえば、今後さらに国民皆保険制度が崩れれば保険料未払い問題は無くなるかもしれないが踏み倒しは必発でしょうし、事態はさらに悪化するでしょう。

 極端な話、医療機関にかかる際に所得証明なり納税証明を別途要求される事態もありえます。

 いまの医療体制で未払い問題を低所得者層増加や受診者のモラル低下を原因として簡単に考えるのは、乳牛に「えさは食べるな、乳を出せ」と言うような傲慢が見え隠れするような気がします。

 株や経済活動全般はともかく、医療という国民生活の基盤こそ国が低所得者保護の姿勢を堅持していかなくてはならないものだと思うのですがねぇ。

 
公立病院の治療代未払い急増 低所得者の増加など影響
都道府県と政令指定都市が運営する全国248の公立病院で、患者から支払われていない治療代(未収金)が昨年3月末で1病院あたり約3300万円に上っていることが、朝日新聞社の調査で分かった。過去3年間で1病院あたり1000万円も増え、1億円を超える病院もあった。自治体の多くが低所得者の増加と医療費の自己負担引き上げが原因と回答。03年度のサラリーマン本人の負担増など、国の医療制度改革も未収金急増に追い打ちをかけた格好だ。病院経営の圧迫要因にもなりかねず、各自治体とも対策に苦慮している。

 計62自治体に質問票を郵送し、1年以上未払いの治療代などを尋ねた。61自治体が回答した。

 この結果、未収金の総額は昨年3月末で80億7686万円。1病院あたりでは、02年3月末に2250万円だったが、03年2650万円、04年2941万円、05年3256万円になっていた。

 病床数や開設診療科などによって病院ごとのばらつきはあるが、自治体ごとに1病院平均をみると、沖縄県(病院数7)は1億3093万円、仙台市(同1)は1億7862万円、札幌市(同1)は1億3860万円。一方、北海道(同9)は839万円、福岡県(同5)は770万円、熊本県(同1)は98万円だった。

 未収になりやすいケースとしては、高額の手術や入院、救急患者、出産時の入院などが挙がった。「国民健康保険料の滞納で保険証を交付されず、保険適用分も含めて、いったん全額を払わなければならない人の未払いも目立つ」と答える自治体もあった。

 未収金発生の原因(選択式、複数回答)では、「低所得者の増加」が74%で最多。具体的には「生活保護には至らないが、生活が困窮している患者」(埼玉県)、「年金生活者、多重債務者、無保険者、失業中の人」(鳥取県)などだった。貯金ゼロや生活保護世帯の急増が背景にあるとみられる。

 次いで「医療費の自己負担増」が64%。高齢者の1割負担徹底(02年10月)▽サラリーマン本人負担の2割から3割への引き上げ(03年4月)▽高額な医療費の負担上限を上げた高額療養費制度の改定(01?03年)といった政策との関連を各自治体とも指摘。「02、03年ごろの負担割合引き上げから顕著」(福井県)、「負担増に伴って増加傾向」(横浜市)などとする見方が多かった。

 「患者のモラル低下」は31%。治療後、連絡がとれなくなる例もあった。

 未収金が経営に及ぼす影響(選択式)については、41自治体が「(経営難の)要因の一つ」と回答。簡裁を通じた督促や訴訟などの法的措置をとる自治体も出てきていた。同時に聞いた「病院経営での累積赤字」の総額は8011億円に上っていた。
2006年04月09日06時12分

● COMMENT FORM ●


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

http://straymind.blog66.fc2.com/tb.php/22-99380ff5
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

NEW ENTRY «  | BLOG TOP |  » OLD ENTRY

プロフィール

straymind

Author:straymind

エントリ

カテゴリ

コメント

全記事表示

全ての記事を表示する

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。